赤ちゃんが話すまでに起きていること(赤ちゃん学へようこそ)」に面白いことが書かれてあります。

生後半年ごろから出てくる喃語は言葉なのでしょうか。どうもそのようだ、ということを示唆する研究があります。脳の中で言葉をつかさどる部分は、ほとんどの人は左半球にあり、左半球は体の右側の機能を支配しているので、大人は通常、言葉を発するときに口の右側がよく開きます。赤ちゃんがいろいろな声を出している時の顔をビデオに撮っておき、顔を半分に分けて口の左右の開きを解析すると、喃語ではない発声の時は左右の口の開きに差はありませんでしたが、喃語を発声している時はやはり、口の右側の開きが大きくなりました。喃語が意味を含んでいるかどうかは分かりませんが、言語をつかさどる左半球のコントロールが強いことから、少なくとも“話し言葉の前駆体”と考えていいようです。(麦谷綾子・NTTコミュニケーション科学基礎研究所主任研究員)

口の開き方で、口から音声を発しているときの脳の働きの様子が推測できるというのは、面白いですね!

また、赤ちゃんの言葉のリズムや音声上の特徴が、割と早い時期から母語の特徴を伴っているということも紹介されています。

言語にはそれぞれリズムや音声の特徴があります。私が行った研究で、ある日本人の赤ちゃんが5歳になるまでの声とお母さんの声を収録し、そのリズムを解析しました。すると、赤ちゃんの声は月齢が上がるにつれて、だんだんお母さんの話す日本語のリズム特徴に近づいていき、25カ月にはお母さんの発声リズムとほぼ同じ状態なりました。つまり赤ちゃんは2歳よりも前にお母さんの発声をひな型に言葉のリズムを獲得しはじめて、2歳ごろには母親と同じようなリズムで話すようになる可能性が考えられます。

発声に母語の特徴が現れるのはもっとずっと早いことを示す研究もあります。ある研究者がドイツ人とフランス人の新生児の泣き声を分析し、声の強さと高さを調べました。ドイツ語は最初の音が強く、高いという特徴がありますが、ドイツ人の赤ちゃんの泣き声もまさに同様でした。フランス語の特徴は語尾が伸びがちで、後ろの音が強く高いことですが、フランス人の赤ちゃんの泣き声も最初の部分より後ろの方が強かったのです。つまり、新生児の泣き声の高さと強さの変化の特徴はそれぞれの「母語」の音声特徴に一致したのです。この結果から、赤ちゃんは胎児期におなかの中でお母さんの発声を学習していると考えられます。

これらの事実から、赤ちゃんは母親やその他の養育者との相互的なやり取りを通じて、母語(「母国語」ではない)の音声的特徴(リズムやイントネーション)を学習し、喃語などで再現することを通じて、言語能力を発達させていると言えるでしょう。その土台のもとに、子音や母音の発声が学習され、それらの組み合わせと意味が結びつき、言葉として獲得されていくのです。

 

 

マザリーズの重要性

「保育Lab」の「010「子どもの音感受の世界」その4・・・語りかけ歌いかけの大切さ」からの引用です。

コミュニケーション能力を発達させ、豊かな語彙を獲得して行くには、周囲からの適切な働きかけが不可欠です。そしてこの時、音声を介したコミュニケーションが、適切な働きかけの重要なツールとなっています。Sternら(1982)は、母親が乳児に対して語りかける場面に応じ、音調曲線を選択的に使い分けるのは、異なる音声には異なるコミュニケーション情報が含まれることを乳児に気づかせるためであると述べています。こうして母親や保育者と関わるなかで、私たちは赤ちゃんの頃から、声の表情から感情を読み取るとともに、自分の感情を音声に表現することを学習しているのです。

母親が赤ちゃんに対して語りかけるとき、高めの声でゆっくりと、抑揚をつけたり言葉を繰り返したりする、歌っているような独特の語り方をしますね。それをマザリーズ(育児語)と言います。マザリーズは母親だけでなく、父親や祖父母といった養育者に加え、乳児との接触未経験学生の子どものあやし行動の中でも出現する(中川・松村:2006)ことが明らかとなっているそうです。

また、母親と乳児との音声的なやりとりには、文化的な差異がほとんど見られず、驚くほど互いに似通っているそうです(Trehub: 2003)。
そのやりとりは、音程の幅が広く,反復型のリズムを持ち,音楽的であるとともに、はっきりとした感情と指示的な(知識を与える)内容を持っているようです。

しかし、その音声的なやり取りには、母語となる言語の特徴、リズムやイントネーションが含まれています。やがて乳児の月齢が上がるにつれ、喃語的なマザリーズに言語的な要素が加わっていきます。子どもは母親や養育者から受け取る音声的な情報から、母語とする言語の特徴を学んでいくのです。

赤ちゃんが話すまでに起きていること(赤ちゃん学へようこそ)」にも、次のようなことが書かれてあります。

少なくとも生後8カ月の赤ちゃんは、育児語のリズムパターンに注意を向けることも分かっています。大人は対乳児発話や育児語の使用を求められているわけではないのに、使ってしまいます。おそらく赤ちゃんという存在の“かわいさ”を感じた時に、こういう発話が引き出されるメカニズムが人間に備わっているのではないでしょうか。こうした相互関係が言語獲得を含めた発達に有利に働いているのではないかと考えています。(麦谷綾子・NTTコミュニケーション科学基礎研究所主任研究員)

 

 

 

Rhymoe®と他の英語プログラムとの違い

Rhymoe(ライモー)はぱっと見、そしてぱっと体験しただけだと、他の英語リトミックだったり、英語でダンスのプログラムと同じように捉えられがちです。しかしそれらとは異なります。

まず英語リトミックとは目標とするところが違います。Kidsのプログラムでは非常に共通点が多いのですが、リトミックが音楽的発展(読譜、調音、ソルフェージュ、即興演奏など)を目標とするのに対して、Rhymoeは言語的発展(英語のリズム感覚の養成、英語の発音の向上、音楽のリズム感覚の養成、など)を目標としている点が異なります。これはレギュラーのRhymoeプログラムで顕著となり、Visual Phonicsやリズミカルなチャンツなどを行い、そのような言語的能力の発展をめざします。

それから「英語でダンス」的なプログラムとは、動きながら英語の歌を歌ったり、英語を話したりするところの、根拠となる部分が決定的に違います。おそらく「英語でダンス」プログラムでは、オール英語でダンスの指導をすることで「全身で英語を感じ、英語を学ぶ」とうたっているでしょう。しかしながら、それが本当に、英語という言語の動きと、われわれ日本人が本来持っている動きの特性とを考慮したうえでのアプローチになっているか、という点では非常に疑問が残ります。そしてその結果、英語で踊って英語を学んだ気になっているけど、ほとんど身にはついていない、ということが十分起こりえます。

日本のわらべうたとイギリスのナーサリーライムで日本語・英語の言語リズムを比較した鷲津名都江氏は、英語の言語リズムを「バウンシング・リズム(ボールが弾むようなリズム)」、日本語の言語リズムを「ストンピング・リズム(足を踏みしめて歩くようなリズム)」と紹介しました。
そして、日本人英語教育指導者がナーサリーライムなどを使用して英語教育をする際、「日本語の重いストンピング・リズムの足取り・振り付け」で、弾むようなバウンシング・リズムを持つ英語の音楽を使って踊る指導をしており、「ますます重いストンピング・リズムの訓練になってしまう」、「日本人のストンピング・リズムが無意識のうちに顔を出してしまうのですから、自分たちの文化・言語の中で身についたものは本当に根深く、自覚していないと恐いものです」と述べています。またこれは、日本人英語教育指導者だけでなく、英語ネイティブ教師についても同様の現象がみられる、すなわち、日本人が本来持っている身体の動きの特性を理解できないまま、知らず知らずのうちにストンピングリズムの動きを増長してしまう、ということがしばしば起こっているのです。

そのためRhymoeでは、まずバウンシングリズムに体が慣れるところを大切にします。それを促すために、レッスン中には必要に応じて日本語の説明を入れます。それはなぜこの動作をするか、なぜこの言葉を言うか、ということを分かったうえでやっていただきたいからです。大人にはそれが非常に効果的ですが、子どもであっても同様です。
なぜならば、われわれ日本人は、母語が日本語だから。日本語の方が明らかに、理解できるから。そして体を英語に同調させることを当人が理解したうえで、英語のリズムに触れる。そのほうが、ただネイティブの英語だけを聞いて慣れていくよりも、圧倒的にたやすく、すっと英語が体に入り、そして忘れないのです。

おそらく英語教育に熱心な保護者の方々にとっては、そんなこと信じられない、と思われるかもしれません。実際うちで毎日英語のビデオや音楽を聞かせているとか、英検何級を取ったとか、フルタイムの英語スクールに通わせてるとかいう方の中には、私のRhymoeのやり方を聞いても「この子には易しすぎる、そんなことは必要ない」とおっしゃる方がいます。
けれども私はそのような方に問いかけます。
その子ども達は、本当に、英語でコミュニケーションできるスキルを持っていますか?
発音がネイティブ並みに奇麗でなくても、英語のリズムをつかみ、ナチュラルな英語を聞き取れ、ナチュラルな英語を話せ、ネイティブの人に通じますか?
いくら英語のアルファベットが書けても、単語を知っていても、英語でコミュニケーションをとるための素地がなければ、その英語学習は、いったい何のための学習ですか?ただ受験のためですか?

小さい頃から全て英語でやっている環境に身を置いていれば、子どもが自然と英語を理解できるようになる、英語を話せるようになる、と思っていたら、それは残念ながら間違いです。それが本当の意味で発揮されるのは、第2言語の習得に最適期と言われる、5-6歳くらいからでしょう。そのことは、乳児期から小学低学年までアメリカで上の二人の子どもを育て、さらに第3子を4歳半から2年アメリカで育てた経験、そしてその間、同年代の在米日本人の子ども達を観察していて実感していることです。
5-6歳になるまでの幼児期では、英語を話したり書いたりすることに躍起になることよりも、母語と異なる言語の音に同調する能力を高めておくことに重点を置いた方がいいでしょう。すなわち、どのように言語を身体で聞き取り、受け止め、再現するか。ということです。そこに徹底的に向き合っているのが、Rhymoeなのです。そしてそのような言語に対するアプローチは、小さい子どものみならず、すべての年齢にとって有効なのです。