英語の絵本や歌を本当に効果的に使って指導していますか?

おこがましいと言われるのを承知で書きます。新しく始まる日本の小学校英語教育において、最初に英語の音を聞く力を育てるなどとうたわれているけれども、教師も、教育研究者も、その本当の意味と手段を理解していない。
英語の音はただ英語の発音だけ考えていてはだめなのだ。英語のリズムとイントネーションを正しくつかむこと、これがどんな言語を習得するうえでも最重要なことなのに、それがまったく指導者からは伝わってこない。

子ども達の英語の理解や習得を助けるために英語の絵本や手遊び、チャンツ、歌を導入するのは重要で効果的だが、それが英語本来のリズムからかけ離れた調子で行われている現実。
それがどれほど子ども達の英語習得の妨げになっているか、指導者の方々は理解していないだろう。

今日、絵本、チャンツ、歌などを英語教育の教材として取り入れることを研究されている方々の実演を見て、本当にがっかりしてしまったのだ。
こんなのじゃ、子ども達は英語の楽しさを感じることはできない。ましてや「まるごと」教師のあり方を取り込むことのできる時期に、このような形で「英語」が入ってしまうのは、デメリットのほうが大きいのではないか。

なぜ、本場アメリカやイギリスの人々による「お手本」がCDでいくつでも見つけられるような英語の読み聞かせを、残念な形でやってしまうのか。今ではYoutubeなどでいくらでも、お手本を探すことができるのになぜそれが探せないのか。イギリスで研究してきた方や、その道の研究者、プロですら、こんな指導実演しかできないのか。じゃあ現場の先生方は、いったいどんなことをしているんだ。

私は、今までのさまざまな経験を通して、英語のリズムと音楽のリズムと身体の動きを連関して習得することで、英語という言語を効果的に習得できると直感した。それから英語の言語学、音声学、第二言語習得論、脳科学、ダルクローズやオルフの音楽教育理論、音楽的リズムのトレーニング方法、英語の発音をよくするメソッド、アメリカ手話、フォニックスなどなど、ありとあらゆる本を読み漁った。そして、自身のダンスフィットネスの指導経験も取り入れ、自分の直感を裏付けし、肉付けし、実践してきた。
だから英語教育に関しても音楽教育に関しても、すべて独学だ。だけど、だからこそ、既存の理論に縛られることなく、自分の気づきにたどり着くことができたのだと、自信を持って言える。そしてその気づきが、日本では(おそらく世界でも)まったく気づかれていないし、下手したら抹殺されかねない、ということも理解している。

だから一つ決意したことがある。
私は日本で、英語の手遊びうた、アクションソング、リズムを効果的に取り入れた英語の読み聞かせ、これらを教える指導者のロールモデルになる。
小学校の外国語活動、英会話教室、プリスクール、英語リトミックや英語で教えるダンス教室なども含め、日本で行われているさまざまな英語の活動において、手遊びや歌を行う教育的意義や効果的な指導方法(そしてやってはいけない指導方法)をきちんと説明でき、実演までできる「ロールモデル」がいないのは、英語教育における問題の一つだと思う。
私は英語のリズムと動きと音楽のプロとして、日本での指導者のロールモデルとなって、それを身をもって示していく。必要な情報を伝え、広げてゆく。
それを形にしたものが、「Rhymoeプラクティショナートレーニング」なのだ。

私一人で、影響を与えることのできる子ども達の数は限られる。だけど多くの指導者が変わっていけば、日本の子ども達はどんどん変わっていく。日本の英語教育も、どんどん変わっていく。それを信じて動いていきます。

 

一般社団法人英語リズムムーブメント協会(ERMA)
Rhymoe考案者

石川良美

「赤ちゃんが話すまでに起きていること」より

赤ちゃんが話すまでに起きていること(赤ちゃん学へようこそ)」に面白いことが書かれてあります。

生後半年ごろから出てくる喃語は言葉なのでしょうか。どうもそのようだ、ということを示唆する研究があります。脳の中で言葉をつかさどる部分は、ほとんどの人は左半球にあり、左半球は体の右側の機能を支配しているので、大人は通常、言葉を発するときに口の右側がよく開きます。赤ちゃんがいろいろな声を出している時の顔をビデオに撮っておき、顔を半分に分けて口の左右の開きを解析すると、喃語ではない発声の時は左右の口の開きに差はありませんでしたが、喃語を発声している時はやはり、口の右側の開きが大きくなりました。喃語が意味を含んでいるかどうかは分かりませんが、言語をつかさどる左半球のコントロールが強いことから、少なくとも“話し言葉の前駆体”と考えていいようです。(麦谷綾子・NTTコミュニケーション科学基礎研究所主任研究員)

口の開き方で、口から音声を発しているときの脳の働きの様子が推測できるというのは、面白いですね!

また、赤ちゃんの言葉のリズムや音声上の特徴が、割と早い時期から母語の特徴を伴っているということも紹介されています。

言語にはそれぞれリズムや音声の特徴があります。私が行った研究で、ある日本人の赤ちゃんが5歳になるまでの声とお母さんの声を収録し、そのリズムを解析しました。すると、赤ちゃんの声は月齢が上がるにつれて、だんだんお母さんの話す日本語のリズム特徴に近づいていき、25カ月にはお母さんの発声リズムとほぼ同じ状態なりました。つまり赤ちゃんは2歳よりも前にお母さんの発声をひな型に言葉のリズムを獲得しはじめて、2歳ごろには母親と同じようなリズムで話すようになる可能性が考えられます。

発声に母語の特徴が現れるのはもっとずっと早いことを示す研究もあります。ある研究者がドイツ人とフランス人の新生児の泣き声を分析し、声の強さと高さを調べました。ドイツ語は最初の音が強く、高いという特徴がありますが、ドイツ人の赤ちゃんの泣き声もまさに同様でした。フランス語の特徴は語尾が伸びがちで、後ろの音が強く高いことですが、フランス人の赤ちゃんの泣き声も最初の部分より後ろの方が強かったのです。つまり、新生児の泣き声の高さと強さの変化の特徴はそれぞれの「母語」の音声特徴に一致したのです。この結果から、赤ちゃんは胎児期におなかの中でお母さんの発声を学習していると考えられます。

これらの事実から、赤ちゃんは母親やその他の養育者との相互的なやり取りを通じて、母語(「母国語」ではない)の音声的特徴(リズムやイントネーション)を学習し、喃語などで再現することを通じて、言語能力を発達させていると言えるでしょう。その土台のもとに、子音や母音の発声が学習され、それらの組み合わせと意味が結びつき、言葉として獲得されていくのです。

 

 

マザリーズの重要性

「保育Lab」の「010「子どもの音感受の世界」その4・・・語りかけ歌いかけの大切さ」からの引用です。

コミュニケーション能力を発達させ、豊かな語彙を獲得して行くには、周囲からの適切な働きかけが不可欠です。そしてこの時、音声を介したコミュニケーションが、適切な働きかけの重要なツールとなっています。Sternら(1982)は、母親が乳児に対して語りかける場面に応じ、音調曲線を選択的に使い分けるのは、異なる音声には異なるコミュニケーション情報が含まれることを乳児に気づかせるためであると述べています。こうして母親や保育者と関わるなかで、私たちは赤ちゃんの頃から、声の表情から感情を読み取るとともに、自分の感情を音声に表現することを学習しているのです。

母親が赤ちゃんに対して語りかけるとき、高めの声でゆっくりと、抑揚をつけたり言葉を繰り返したりする、歌っているような独特の語り方をしますね。それをマザリーズ(育児語)と言います。マザリーズは母親だけでなく、父親や祖父母といった養育者に加え、乳児との接触未経験学生の子どものあやし行動の中でも出現する(中川・松村:2006)ことが明らかとなっているそうです。

また、母親と乳児との音声的なやりとりには、文化的な差異がほとんど見られず、驚くほど互いに似通っているそうです(Trehub: 2003)。
そのやりとりは、音程の幅が広く,反復型のリズムを持ち,音楽的であるとともに、はっきりとした感情と指示的な(知識を与える)内容を持っているようです。

しかし、その音声的なやり取りには、母語となる言語の特徴、リズムやイントネーションが含まれています。やがて乳児の月齢が上がるにつれ、喃語的なマザリーズに言語的な要素が加わっていきます。子どもは母親や養育者から受け取る音声的な情報から、母語とする言語の特徴を学んでいくのです。

赤ちゃんが話すまでに起きていること(赤ちゃん学へようこそ)」にも、次のようなことが書かれてあります。

少なくとも生後8カ月の赤ちゃんは、育児語のリズムパターンに注意を向けることも分かっています。大人は対乳児発話や育児語の使用を求められているわけではないのに、使ってしまいます。おそらく赤ちゃんという存在の“かわいさ”を感じた時に、こういう発話が引き出されるメカニズムが人間に備わっているのではないでしょうか。こうした相互関係が言語獲得を含めた発達に有利に働いているのではないかと考えています。(麦谷綾子・NTTコミュニケーション科学基礎研究所主任研究員)